なまにく

第一話だいいちわ なんにもない一日いちにち、な~んにもない二人ふたり

 何なんの変哲へんてつもない一日いちにち。

 朝あさ、窓まどを開あけると、少すこし冷つめたい風かぜが部屋へやに入はいってきた。遠とおくで電車でんしゃの音おとがする。いつもと同おなじ街まちなのに、今日きょうはどこか静しずかに見みえた。

 机つくえの上うえには、読よみかけの本ほんが一冊いっさつ置おいてある。昨日きのうは眠ねむくて、途中とちゅうで閉とじてしまった。栞しおりを挟はさんだページを開ひらくと、物語ものがたりの続つづきが待まっていた。

 湯気ゆげの立たつお茶ちゃをそばに置おいて、ゆっくりと文字もじを追おう。わからない言葉ことばで立たち止どまり、その響ひびきを口くちの中なかで確たしかめる。急いそぐ理由りゆうは、どこにもなかった。

 ふと顔かおを上あげると、雲くもの切きれ間まから光ひかりが差さしていた。もう少すこしだけ、この続つづきを読よんでいよう。